手軽な一揆の起こし方

エセ評論家の生活と意見

Nikkor Fマウント DXズームレンズ vs FX単焦点レンズ 比較

現在のニコンには、二種類のレンズマウントがある。

一つは、50年以上の伝統を持つ、フィルムカメラ時代からの奇跡の長寿を保つ「Fマウント」。

もう一つは、2018年にフルサイズミラーレス「Zシリーズ」とともに世に送り出した、ニコン渾身の新マウント、「Zマウント」。

1インチセンサーのミラーレスを作って盛大にコケた時の「ニコン1マウント」にはあえて触れまい。

数十年前の設計ゆえに多くの制約があるにもかかわらず、キャノンなどの他社に期する光学性能を磨き続けたFマウントのレンズ同士の比較をする。

F、Z両マウントともに、センサーがAPS-Cのものと、フルフレーム(フルサイズ)のものとがある。

センサーが小さい前者専用に設計されたコスパの良いレンズが、DXレンズ。

今回は、

DXのズームレンズであるAF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4.0 ED VR

と、フルフレームにも対応する

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8 G ED

の比較。

ボディはどちらも、APS-CのD7500。

 

まずはズームレンズ。

 

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D7500/AF-S DX NIKKOR 16-80mm F2.8-4.0 ED VR


雪のシーズンに外で写真を撮る際、私が最も欲しいのは雪と雲の質感、陰翳。

昨年末、それを狙って車で走っている途中で撮ったのがこの写真。

焦点距離は65ミリであり、テレ端でもワイド端でもない、中間領域。このレンズでは、比較的解像しているはずである。

太陽は雲に隠れていたが、ここだけ晴れ間だった。

現地で目視した印象を再現しようと、Lightroomで明瞭度、かすみ除去などをかなり上げた。これにより毀損される質感の滑らかさ(上記二つのパラメータを上げると画面がざらつく)を補った。

しかし、どうもうまくいかない。

特に雲の陰影が茫洋としている。

 

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D7500/AF-S DX NIKKOR 16-80mm F2.8-4.0 ED VR

80mmで撮ったものも載せておく。

ゴリゴリにシャープネスを上げたが、やはりいまいち。

 

では、単焦点はどうか?

昨日撮ったもので、場所も違うため一律に比較はできないが、何となく傾向としてこう違うのでは?という感触があった。

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D7500/AF-S NIKKOR 35mm F1.8 G ED

ズームレンズと同じように、F7近辺で撮っている。

こちらは太陽がギリギリ画面端に入るか入らないか。

まず、太陽の光条が降り注いでいるのが、画面左下の方の空に確認できる。

画面端に太陽があるにもかかわらず、ゴーストもフレアも出ていない。かなり驚異的な光学性能である。

このレンズ、プロ向けではなく一般消費者向けである。他社でこのグレードのレンズなら、フレアやゴースト、画面端のヴィネットなどある程度出ているようだ。

汎用グレードでも高い性能を発揮してくれるのはありがたいが、ニコンは商売がヘタといわれるのもわかる。潰れるなよ、頼むぞ(汗

 

注目すべきは、雲の陰翳だ。光を受ける面から陰になる面へと、ドラスティックに変化している。

 

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D7500/AF-S NIKKOR 35mm F1.8 G ED

こちらも、雲の向こうの太陽から光条が射している。
こうしたわずかな光も捉え、コントラストを浮かび上がらせている点で、やはり単焦点の光学性能の高さがわかる。

 

以上比較してみた結果、ズームと単焦点で比べた時、繊細な光の捕捉能力の高さは、単焦点の持つ強みだと理解できた。

他方、ズームにもよさはある。

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D7500/AF-S DX NIKKOR 16-80mm F2.8-4.0 ED VR

例えば、がりがりザラザラごちゃごちゃしたものを撮るのには、少し荒々しいこのズームレンズが似合うように思う。

 

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D7500/AF-S DX NIKKOR 16-80mm F2.8-4.0 ED VR

 

単焦点は、より静謐なもの、繊細なものに効くように思う。

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Z6/AF-S NIKKOR 35mm f/1.8 G ED

こちらは、フルフレームのZ6に件の単焦点をつけて撮ったもの。

ルフレームで撮影すると、APS-Cに比べてさらに雑味が消えていくように思う(あくまで個人の感想です)。

 

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D7500/AF-S NIKKOR 35mm F1.8 G ED

特に、暗い部分の明度を持ち上げるときなどに、フルフレームの方が破綻が少ないように思う。

 

結局、どちらが性能がいいという問題ではなく、用途に応じての使い分けとなる。

荒々しい質感やレトロさ、温かみが欲しければDXズームやD7500などのAPS-C、繊細さ、静謐さが欲しければ、単焦点やZ6がより適合的、という傾向がある。

 

ちなみに最後に、Zマウントのズームレンズ(汎用グレード)をZ6につけて撮影した写真を掲載する。

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Z6/Z NIKKOR 24-70mm f/4.0

Zマウントレンズ。フルフレーム用とはいえ、ズームレンズでこの性能。

本当にシャープな描写というのは、カリカリに見えるのではなくサラサラ絹のように滑らからしい。

汎用ズームでサラッとこの性能を発揮する、ニコンの新型マウント、今後の進化に期待したい(がしかし、いかんせん高い・・・)。