1.白馬到着
まぁ、倶知安駅といい勝負であるが、電化されているので白馬の勝ちである。
ここの路線もってるのはJR東日本である。
中部地方は長野県のこんな路線まで東に押し付けて、JR東海はせっせとドル箱の新幹線だけに勤しんでいる。
JR東海はもうちょっと負担すればどうか。
JR北海道丸ごとくれてやろうか。
2.岩岳リゾート
白馬では岩岳リゾートなどに足を運び、サマーシーズンのプロモーションを視察した。
山頂は冷涼で過ごしやすい。
白馬村を一望でき、反対側には白馬三山がさらに高く聳える。
岩岳山頂には輪―ケーション用施設が充実していて、wifiが飛び、電源設備のあるテーブルなどが多く用意されている。
近くに喫茶店やレストランなどもある。
岩岳や栂池はスキー場が私有地(入会地)で、国有地等ではく国定公園などの自然公園に入っていない。
そのため、ニセコなどに比べて自由に様々な施設を作ることができる。
そこに多くの人を集めて、夏場の避暑を前面に押し出すのが、白馬の強みだ。
客は首都圏と名古屋を中心とした東海地方からが多い。
周辺人口が圧倒的に多い点も、北海道(札幌200万人強300万人弱の都市圏しかない)に比べると強い。
どうでもいいが、全てスマホ写真である。
iPhoneで撮った。
一見してきれいに見える。
なぜか。
まず、色を鮮やかにする処理が自動で施されている。
さらに、暗いところを明るく、明るいところを抑えるダイナミックレンジの処理もスマホがやっている。
それで、イイ感じに見えるようにしている。
一見してイイ感じなのだが、どうも何枚も見るとみあきるものでもある。
3.宿泊施設
集落には真ん中に水車があり、水路がめぐらされていた。
糸魚川に到る塩街道の街道筋の集落らしい。
塩街道は、日本海から信州へと塩を運んだ、上杉武田双方のロジスティクスを支えた生命線である。
奥にぼけているのは水路である。
古民家の中は大改装されていて、洋風のキッチンなどがある。
広いのはいいのだが、暖房は石油が切れていて点かず、まだ寒い高原ではあまりよろしくないところも散見された。
オフシーズンで稼働させていなかった所に試泊のような形で泊ったからか。
しかし、こうしたもともとある古民家を宿泊施設にできるのは、北海道にはない魅力で、現地で体験してみると極めて強いコンテンツだとわかる。
4.青木湖、中綱湖、木崎湖
思いがけずよかったのは、この近くにある湖である。
ベタ凪の小さな湖が三つあり、ほとりにせり出して民家や古い旅館、キャンプ場が並んでいる。
木崎湖には、森城という中世前期の古城跡がある。
犬も歩けば棒に当たるで、適当に散策して城に行き当たることができるのが、北海道より南の、それも信州など古来人の手が多く入った地域の良い点だ。
まず登りを見てわかるのは、森城を居城とした中世前期の仁科氏が、桓武平氏の流れだろうということである。
wikiで調べてみると、やはり桓武平氏の流れを汲み、さらに安倍氏の係累でもあるらしい。
さらにこの森城の仁科氏を、木曽義仲の次男、「朝日次郎」源義重が攻め落としているらしい。
頼朝に心中を誓った後での、頼朝の命によるらしい。
義重には、義仲のブレーンであった大丈坊覚明とともに備後尾道に下ったとの説もある。
この備後尾道に下ったとされる義重の末裔と比定されるのが、誰あろう筆者である。
尾道には、覚明を祀った覚明神社というものがあるらしい。
一度行って、経緯をくわしく調べてみたい。
中世の武士は、現代の一般人が考える以上に、各地を飛び回っていた。
荘園が散在し、さらに各所を流通路として物流が形成されていたからである。
瀬戸内広島と信州の山奥、これらを行き来したとて不思議ではない。
実際、覚明神社のある尾道市向島からしまなみ海道を通って行った大三島にある大山祇神社には、義仲が寄進した等検討が存在するのを神宝館で見た。
厳島神社を持つ平家との対抗等の中で、何らかのゆかりがあったのだろう。
5.二泊目
一泊目はややズッコケ気味だったが、二泊目は白馬リゾートの底力を見せてもらった。
シェラリゾート白馬である。
ここは玄関先に足湯、宿泊客なら無料で食べ放題の山菜汁などの振る舞いがある。
さらにフロントから先には広々としたガーデンや、パーティーホールをワーケーション用などに開放した広間、フリードリンクなどもある。
古民家を移築改装した温泉など目玉もある。
室内には暖炉、ベランダには露天風呂まで完備している。
ベッドも広々としている。
宿泊客を楽しませる仕組みに凝っており、地場資本の経営のホテルでありながらリゾートの最先端のエンターテインメント性を充実させている。
これで一泊35000円らしい。
内容を考えればディスカウント価格と思える。
部屋の什器はやや古いが、そんなことは全く些末に思わせるほどに楽しませてくれる魅力にあふれた良いホテルである。
6.総括
今まで信州に家族で行ったことは数多いが、白馬まで足を延ばすことはなかった。
しかし、岩岳、シェラリゾートなど、夏の避暑に格好の素晴らしい施設が多い。
冬だけでなく、夏のリゾートとしても、信州の他の地域に大きくアドバンテージのある良い地域だ。
今度は私用で泊まりに行きたいね。
また、白馬やその周辺は、善光寺や戸隠もあり、歴史的遺産が多い。
白馬の開発を見据える人たちも、そうした歴史的文脈の誇りを持ち、外国資本の力を取り入れつつも主導権は自分たちが握るという気概に溢れている。
その点で、ニセコを反面教師にするしたたかさを持ち合わせている。
何百年と地元に根付いて地主として生きてきたからこその意識と思う。
歴史の重みは、こうした住民のその地域を守ろうとする意識を生み、それが自らが主導していかねばならないという戦略的思考をも生む。
考えれば我が祖父や曾祖父も、600年の昔からの、閑院流藤原氏の荘園の庄司としての旧家の重みを感じ続けてきたわけだ。それが彼らを縛ってきたところもある。
そうした時の積み重ねは、枷にもなりうるし、将来を創るうえ必要なよすがともなりうる。
いい値段で土地が売れるとすぐによそに移住してしまう人が多いニセコでは、逆立ちしてもできない強みだと思う。どだい、歴史の重みが違う。
歴史を始め文系科目は軽視される傾向にあるが、こうした生活に根付いたところでも、人々の意識に大きな違いを生むことがわかる。
では、信州になくて北海道にある強みは何か。
圧倒的に、食材である。
信州は、思えば蕎麦とリンゴはあるが、それ以外に旨いものが豊富にある、というまでの印象はない。
これは飯田、木曽、諏訪、松本、長野に至るまで全域に感じることだ。
実際、白馬の食は、「ごちそうといえば刺身」という海なし県のご他聞に漏れず、という感じだった。
その点で、牛肉には劣るがそれ以外は野菜から海産物まで豊富な北海道は圧倒的有利といえるし、グルメツーリズムを押し出す必要がある。
ニセコに関していえば、北海道が持つ「素材一流、味付け三流、サービス五流」の課題のうち、味付けまではかなり追い上げている。
あとは、高級ホテルであるにもかかわらずワーキングホリデーかなにか、どこの馬の骨とも知れぬボーイがなめた仕事をしているサービスが徹底的に改善されれば何とかなるだろう。