手軽な一揆の起こし方

エセ評論家の生活と意見

松山城

 

1.大街道

松山城のロープウェイに乗るために、路面電車の大街道電停で下りる。

ここは松山の中心商業地域のようである。

大街道

姫路もそうだが、西日本は中心市街地の商店街が比較的生き残っている。

大街道からロープウェイへ

朝で、かつ雨の日なので観光客は比較的少ない。

途中の喫茶店

道中古い建物を利用した喫茶店などの商店が多く並ぶ。

通り全体が観光スポットになっている。

ブーランジェリー

外国人観光客もいるが、比較的少ない印象である。

 

2.松山城の施設展示

松山城

ロープウェイで登ると、すぐに本丸の外の曲輪まで到達する。

石垣の工法

松山城で感銘を受けたのは、解説の的確さ、詳しさである。
天守閣内の展示の解説もそうだが、石垣の工法に関してここまで的確に分類、解説している説明書きを見たことがない。

施設展示はおろか、他の書籍よりも簡潔明瞭である。

 

3.風景

瀬戸内海の眺望

市街地

城壁から垣間見える海

切込ハギの布積みの石垣

4.天守内部

天守に入ってからも、現存天守にしては珍しいほど多くの展示が行われていた。

通常、姫路城や松江城などの天守内はほとんど展示物がない場合が多い。

床面積が狭い弘前城などは、なおさらであった。

松山城は、連立式天守で床面積が広く、さらに小天守もすべて上階に登れるようになっている。

RC復元になっているものの、和歌山城天守がこれに近いと思われる。規模や形状、工法のいずれをとっても、3層3階の層塔式で近世の近世天守、連立式と共通点が多い。

さらに、双方ともいったん焼失したものを江戸末期に再築した、稀有な例であることも似ている(和歌山城は米軍の空襲で再び焼失し、よって現在はRC造)。

展示

藩内の徴税制度などについても解説がされており、内容が濃いものであった。

英語版の解説

尤も、日本語版は用語の定義が書かれておらず若干分かりにくいが、この点英語版解説の方がわかりやすかった。

解説2

 

5.天守からの眺望

天守からの眺望もよい。

天守から

松山城天守は立ち入り禁止箇所が少なく、ほぼ全て見て回れるため、多彩な眺望が得られる。

天守の屋根と街と海

北面の風景

西の方面の市街地

 

道後温泉 伊佐爾波神社 湯築城

 

1.道後温泉

朝8時前に道後温泉について、荷物を預けて松山城へ。

道後に来るのは3回目で、前回来たのが大学生のころ、その前は小学生のころなので、それぞれ17年前、25年目となる。

道後の伊佐爾波神社

急な階段のある神社が目に入ったので、行ってみることに。

伊佐爾波神社参道

伊佐爾波神社に来たのは、3回の来訪で初めて。

早咲きの桜が一本だけ咲いて、散り始めている。

階段の桜

内陣を全周まわれるので、入ってみた。

神社には詳しくないが、橿原神宮も構造だった。

 

2.内陣

境内

内陣の様子

蘇鉄が植えられており、暖かい地域であることが感じられる。

内陣

以前稲荷大社でも似たようなものを撮ったが、内陣の社殿に朝から燈明が捧げられていた。

 

3.松山城湯築城

境内から望む松山城

悪天候の日であるが、近くにある松山城は望めた。

道後湯築城

途中、道後湯築城を回って路面電車の電停まで歩いた。

後に行った松山城もそうだが、松山の史跡の説明書きは非常に当を得ており、的確な解説がされていてよかった。

オレンジフェリーで大阪から愛媛へ

 

1.フェリーは安くて便利

おれんじおおさかのファンネル

大阪から松山に行く際、飛行機を使って前乗りや当日入りするのはつまらないので、前日の夜にフェリーで行くことにした。

トイレと風呂は共用だが、広い個室で22,000円弱。

航空券だけでおそらくこれより高くなるはずで、前日入りの宿泊費まで考えたら、フェリーのと欲城前は非常にお安い。

定住している外国人の家族などは乗っていたが、外国人観光客かほぼ皆無だった。

まだ、日本の中長距離フェリーの快適さはあまり知られていないようだ。

結構結構。

 

2.まずは大阪から

京阪で淀屋橋まで行き、一筋隣の肥後橋まで歩く。

肥後橋から地下鉄で住之江公園まで行き、ニュートラムでフェリーターミナルに行く。

淀屋橋界隈(写真は別日)

3.フェリーターミナルで乗船

ニュートラム無人運転名だけあって加減速がガサツである。

エンイチぶらり旅でエンイチ氏が「アレ」を快に立ち寄るコンビニ

フェリーターミナルに着いたら、まずは乗船ではなくコンビニに行く。

https://www.youtube.com/@en_ichi

フェリー動画界の第一人者であるエンイチ氏によると、大阪のフェリーターミナルに行く際にはまずここでアレを買うのがマナーである。

んで、買った「アレ」

酔っ払う必要がないのでノンアルのアレ=檸檬堂を購入。

 

4.船内は便利

おれんじおおさか船内の謎の絵

エンイチ氏の動画でも乗泉寺に毎回出てくる謎の絵。

結構不気味である。

寄贈者は今治造船と書かれており、今回乗船する「おれんじおおさか」を建造したのが今治造船だと推察される。

室内は立派

大画面とソファ、ベッド二つのスイートという部屋。

洗面台はあるものの、トイレと風呂がないのは若干残念。

しかし、共同の展望風呂は広く快適だった。

なお、午後8時乗船開始、午後10時出港で、8時過ぎに風呂に行くと誰もいないのでよかった。この時間はみな食堂に殺到しているようだった。

食堂のおでん

食堂は満員であったが、食べ物は部屋に持ち帰って食べられるとアナウンスが流れていたので、おでんを持ち帰った。

大根、豆腐、牛筋で450円。

持ち帰りで食べられるのは便利である。にもかかわらず、なぜかみな混んでいる食堂で食べたがるようで、持ち帰り客はあまり見なかった。

大阪南港フェリーターミナル

10時に出港するころには寝ることにした。

乗船開始が2時間前なのは非常に便利で、出港時には寝支度ができていた。

 

5.翌朝6時に東予港に。そこから松山までの移動手段も快適

道後に着いたのは翌朝7時40分頃

翌日6時に東予港で下船。

6時20分に松山行のバスに乗車、1時間ほどで松山市駅、7時40分頃、道後温泉に着いた。

2024冬はエルニーニョ現象

北海道に住んで間もなく5年、現在の職についてからのキャリアの半分はこちらでの年月となった。

5シーズン冬を過ごしているが、毎年コンディションの違いよよく感じるのは、雪という目に見える指標があるからか。

今年はエルニーニョ現象年で暖冬となっているが、印象としては2020年初頭(コロナが流行り始めたアノ年)よりははるかにマシである。

2020年はすべてが足りなかったように思う。

降雪日数、降雪量自体が少なく、かつ暖かくて雪が解け、さらに1月の下旬に雨が降るなどという異常事態だった。

その点今年は、異常な暖かい日があるものの雪は降っている。

今週など2月末というにもかかわらず夜は連日マイナス10度台である。

街中やスキー場に雪はあり、いまのところ普通に滑れる。

しかし、雪が少ないとは言われており、3月にはなくなってしまうのではないかと懸念されてもいる。

まぁそれなぁそれで車も運転しやすいし、自転車も乗れるしいいんだけどね。

羊蹄山

ただ、雪は降るものの、それをアテにするリゾート産業というのは非常に不安定なものである。

地球がむせて咳をしただけで人類は滅びる。

 

つくばからの帰りに浅草を散策

つくばに講演で出張に行った帰りに、乗り継ぎで浅草で降りた。

商店街

朝10時前

朝10時前に行ったため、人通りがまだピークではなかった。

思いのほか人通りは多くなかったので助かった。

飲み屋は朝から

朝10時には、既に飲み屋が開いていた。

戦争時とスカイツリー横構図

同縦構図

浅草寺に行ったのは初めてだった。

コンクリづくりの増上寺と違い、寺らしい寺だった。

本堂

開基の由緒

ここの由緒書きで面白かったのは、浅草寺浅草神社神仏分離で分割されてしまったことをしっかり書いていることだ。

毎日が縁日

縁日の出店が普通の土曜日でも出ていた。

神社では猿回しに人垣ができていた。

京都や奈良の寺と違い、昔からの都会の娯楽や賑わいの中心地として、現役で息づいている。

路地

日常の中にスカイツリー

 

2024正月、下賀茂・城南宮・宇治を散策

正月の帰省の際の写真。

いつも通り、

八坂神社

下鴨神社

⇒城南宮

の順番で巡回した。

日の並びのためか、正月三が日が終わっても多くの参拝客がいた。

賀茂神社

下賀茂では、例年通り焚火があった。

鳥居をくぐった先の焚火

城南宮は、他の二社に比べてすいていた。

城南宮

 

翌日宇治に行った際の写真も少し。

宇治橋から

縣神社参道から分かれた宇治橋通り

京都駅に買い物に行った際の、相変わらずの京都駅の風景

京都駅

 

呪術廻戦「渋谷事変」編の戦闘描写に見た空虚感「進撃の巨人」との違い

 

以下の文章は、タイトルに出ている各作品のネタバレが含まれます。

また、呪術廻戦「渋谷事変」編に対する批判的考察という立脚点を敢えて軸に据えています。批判を受け付けない方は閲覧を控えることをお勧めします。

 

1.呪術廻戦「渋谷事変」編の戦闘描写に見た空虚感

集英社鬼滅の刃の次に仕掛けた巨大プロモーションは、呪術廻戦という作品についてであった。

主人公の虎杖悠仁が取りこんだ両面宿儺の力をめぐる話を軸に据えつつ、それを取りまく、史上最強の呪術師・五条悟、かつての彼の盟友であり呪詛師に堕ちた夏油傑(故人)などの、平安の世から続く呪術世界の「パワーバランスが崩れつつある現代」を描く和風ファンタジーの大作である。

平安末期から中世にかけての「呪術的な中世」の日本、神仏混淆密教的世界観を舞台背景としてうまく取り込んでおり、面白い作品である。

同時に、アニメ制作会社MAPPAの超絶的なアクション描写も話題を呼んでいる。

しかし、特に渋谷事変編の40話前後から先毎回繰り広げられるハイカロリーな戦闘描写が、どうしても筆者には印象に残らなかった。

いくら激しく動こうが、超絶的なダイナミズムであろうが、こちらの閾値を超えた状態が常態化してしまい、かえってマンネリ化してしまったように思う。

筆者は、良作は1話あたり2回視聴することが多いが、渋谷事変の大バトルシーンが佳境になって以降は、1話1回の視聴のみに切り替えたくらいである。

常に高いテンション(緊張感)を保ち、筆者に強い印象を残してきた他の三作品、「進撃の巨人」と「Fate/Zero」、「コードギアス」と比較しつつ考えてみた。

 

2.「進撃の巨人」のもたらす恐怖、緊張、ミステリー

昨年秋に、ついに進撃の巨人というマンガ・アニメ史に残る金字塔となる作品のアニメ版が完結した。

この作品の持つ群像劇としてのレベルの高さ、一人一人の人間性・思想・信条とそれに突き動かされる振る舞い、心情の繊細な動きの丁寧な描写なども一級品で他の追随を許さない。

しかし、この作品の他に代え難い凄みは、人類を、国家を、文明を、特定の思想に偏ることなく、ありのままの残酷でかつすこし優しい現実を、過度の希望も絶望も一切許さない冷厳さで描き切ったことにある。

これを真骨頂としつつも、この桁外れの超大作が絶大な支持を得て、視聴者を最終回まで牽引した立役者は、なんといっても戦闘シーンである。

壁を突破して大攻勢をかけてきた巨人との、壁内人類の存亡をかけた戦い

意志を持った女型の巨人との熾烈な戦いとその正体

王政府による巨人の歴史の秘匿とクーデター

獣の巨人に率いられ統率された巨人の大群との雌雄を決する局地戦と甚大な犠牲

マーレでのエレンの奇襲作戦と戦槌の巨人をめぐる戦い

そして最終話に到る、「天と地の戦い」

100話近いエピソードがありながら、戦役、戦闘としては以上のものとあと少しに集約される。

しかし、そのいずれもが時間を忘れさせるテンションを保ち、次に何が起こるのか全く予測できない状況の連続である。

渋谷事変と比較して、進撃の巨人の全戦役、戦闘状況は、圧倒的に密度が濃い。

この両者の差は何か?

 

3.戦闘のストーリー、緊張感の差

単純に、緊張感の差である。

渋谷事変でも前半の、五条悟と呪霊花御、同漏瑚の戦いは、お互い手の読み合いであり、それなりの緊張感があった。五条が0.2秒の領域展開という奇策の一手を打ち、その後の隙を狙った夏油が獄門疆を開門する場面などは、非常に戦闘のストーリーとして質の高いものであった。

一方で、その後の脹相と虎杖のバトル、禪院甚爾の復活と暴走、両面宿儺と漏瑚や魔虚羅大将の戦闘などは、こうした「戦闘のストーリー」が見られない、「アニメーター作画見本市」となっていた感が否めない。

大抵のアニメのバトルシーンでは、ストーリー性を付与するための、あるいは視聴者の心情をコントロールするための手法として、「過去譚を挟む」、「複数の戦闘場面等を同時進行させる」などが用いられている。

どちらも、ストーリーラインを複層化して物語のテンションを保つ定石である。

他方、「呪術廻戦 渋谷事変編」では、こうした手法は一部用いられるものの、おそらく意図的に上記のような「作画展覧会」に傾倒し、これを強行したと思われる。

そもそも、上記の過去譚や複数の戦闘の同時進行という複層化は有効ではあるものの、「進撃の巨人」の戦闘シーンの異質な緊迫感、もはや通奏低音とまで言っていいほどの異常な緊張感は、この程度のもので生まれはしない。

進撃の巨人」の異様なテンションを生んだ要因は、おそらく戦闘シーンそのものの中にきちんとストーリーを落とし込み、かつそれが謎に満ちた不気味さ・希望と絶望のジェットコースターを内包するミステリー・ホラーだからであろう。

これは、実はスピルバーグのエンターテインメント作品にも通底するものと思われる。ジュラシック・パークを見ればよい。

登場人物が茫然として立ちすくむその後ろから、ぎろりと大きな目をティラノサウルスがむける。

ヴェロキラプトルがこちらに顔を向ける寸前に、物陰に隠れて一命をとりとめる。

こうした一つ一つが、スペクタクル・シーンそのものが持つストーリーである。

ちなみに、ジュラシック・パークのようなアクション・シーンが見られる印象深い作品として、スタジオ「オレンジ」によるCGアニメ「宝石の国」がある。監督の京極尚彦氏(ラブライブ!の監督)は、膨大なリファランスから優れた映像表現を構築する能力が高い。

翻って「呪術廻戦」は、第1話から一貫して、あたかも「マトリックス」がCG技術見本市であったのと同様に、ストーリー性でいかに緊迫感を生むかを考えるよりも、作画見本市としての立ち位置に寄っている。

進撃の巨人」に話を戻そう。

この作品は、スピルバーグ作品などともまた異質であるが、戦闘シーンにおける特有のストーリーを持つ。

それは、多くの場合謎に牽引されている。

突如として巨人の力を発現したエレン。

巨人と何か?

エレンが手にした「王の力」を狙うベルトルド、ライナー、そしてアニ。

彼らの出自は、目的は?

何に恐怖し、何に突き動かされて、壁内人類の殲滅などという凶行を推し進めようとするのか?

その狂信的な目的のためには手段も選ばない恐ろしさ。

底なしの、謎に包まれた巨人の力。

それに対してあまりにも無知な調査兵団と壁内人類の、圧倒的な力の差。

調査兵団たちは、常に極限の選択を迫られ、時に歓喜し、しかしそれが一瞬で絶望に突き落とされ、それでもしぶとく食い下がっていく。

調査兵団の大規模索敵陣形やその中に潜む「敵」の存在、巨大樹の森での女型巨人鹵獲兵器。

それを上回る女型巨人の硬化能力、巨人を呼ぶ能力。

進撃の巨人とリヴァイの戦闘力による陽動と緻密な連携。

それを圧倒的に上回る獣の巨人の巨人操作能力、大量破壊を可能とする投擲能力。

調査兵団の、いわば「戦術的な」最高到達点を、常に予想を超える「戦略兵器」としての能力で上回っていく巨人。

この両者の攻撃の「被せ合い」こそが、戦闘そのもののストーリーである。

その極限状況下で、「常にどちらかを選ぶ」ことを迫られ、選択し、それが果たして正解だったのかと苦悩し続けるリヴァイやエレン。

「何かを得るためには大切なものを犠牲にする」判断を自らに強い続けるエルヴィンやアルミン。

極限下での想像を絶する過酷な世界観を獲得していく登場人物の思索までも、この戦闘描写の中で描かれている。

進撃の巨人などの超一級のバトルエンターテインメント作品では、戦闘シーンのストーリーラインの複層化などという基本以上に、戦闘シーンそのものの物語性をいかに確保するかが考え抜かれていることがわかる。

ここが、おそらく「渋谷事変編」との大きな差ではないかと思われる。

 

4.Fate/Zero

いまからもう12年も前の作品になるが、これも「進撃の巨人」と同様、戦闘シーンそのもののストーリー性を確保した作品である。

この作品のポイントとして、各登場人物の譲ることのできない大切なもの(万能の願望器に託すべき願い)をかけた戦い、語弊を恐れずに言えばいわゆるメロドラマとしての特性が挙げられる。

衛宮切嗣という男の追い求めた理想とそれに到るための手段を選ばない姿勢

セイバー アルトゥリア・ペンドラゴンの、あくまで高潔であろうとする姿

この二つは、ともに聖杯を求めつつもそのプロセスにおいて絶対に相容れないという悲劇を描き出す。

他にも、

衛宮切嗣とケイネス・エル・メロイの、魔術的能力に劣りながらもどこまで汚く強いあり方と、高踏的で傲慢な強さの戦い。

アルトゥリアとディルムッドの、ローマンケルトの英雄同士の、互いを認め合いながらも令呪に束縛され不本意な戦いを強いられる不条理。

自らと人類を未踏の地へと導こうという壮大な野心を胸に、東の海オケアノスを目指し戦うイスカンダルアレクサンドロス)と、世界はすべて自らのものと豪語し、アレクサンドロスの希望を打ち砕くギルガメシュ

他にもいくつものマッチアップが、それぞれの理想、目的、手段、運命に絡めとられ、引き裂かれていく姿を描いている。

これら人それぞれの在り様を戦闘描写の中で描き切ったからこその、戦闘描写の説得力でもあった。

特に衛宮切嗣言峰綺礼に関しては、その魔術師・聖職者らしからぬ暗殺者・テロリストとしての異質な発想・戦術・戦い方が視聴者の予想をはるかに超え、より一層の魅力をもたらした。

 

5.コードギアス

これも、ルルーシュとスザクという相容れない存在が、仮面を外せば親友で、仮面をかぶれば不倶戴天の敵というメロドラマであり、この点ではFate/Zeroと通底するものがある。

ナイトメアの戦闘能力、ルルーシュの絶対服従のギアスとそれを用いた謀略、それを超える局面打開力を持つスザクのランスロット

さらにコーネリア、黎星刻、ディートハルト、シュナイゼルなど、常に戦力・戦術・戦略の読み合いの応酬であり、その中にギアスという異能が絡むことで「そういうのもありか」というトリックが組まれ、視聴者を驚かせる。

さらに、ギアスが生んだ悲劇であるユーフェミアやシャーリーの死など、登場人物を引くに引けない状況に追い込んでいく。

コードギアスも、戦闘シーンの中で常に目まぐるしくストーリーを展開させ、高いテンションを保っている。

 

6.振り返って

以上のように振り返ってみると、「呪術廻戦 渋谷事変編」は戦闘シーンそのものに傾倒しすぎたきらいはある。

「呪術廻戦0」や、「呪術廻戦 懐玉・玉折編」では、五条と夏油の確執が描かれるなど、上記でいうメロドラマ的な要素が比較的強くドラマとして面白かったが。

呪術廻戦に関しては、本来的に物語をけん引できるの人物が、アニメ放送終了段階ではやはり五条悟(と夏油傑?)に偏っており、その点が物語としての強靭さの少なさになっている点は否めない。

今後次第ではあるが、たとえば、

呪霊の目指す世界、両面宿儺の野望、伏黒恵、乙骨憂太の立ち位置

なぜ呪力の漏出は日本だけで顕著なのか?

なぜ現代において平安末期以降衰退していた呪力がインフレーションを起こし、五条悟の誕生をきっかけにパワーバランスが崩れつつあるに至ったのか?

がより明確になってくれば、あるいは大きく作品のスケールも変わるかもしれない。