日産のノート
先日白馬まで行った際、富山空港に着いてからの移動はレンタカーだった。
普通ならば乗った車の写真でもアップするものだが、そうしたものはない。なぜか。写真を撮っていなからである。いちいちブログにアップするからなどと写真を撮ってまわる様なみっともない、俗物的な愚行は致さないのである。
というかただズボラでめんどくせぇのである。
日産によると、モーター最大トルク280Nmくらいとのことで、2800ccNAクラスのトルクが出ることになっている、らしい。
確かに、ゼロ発進など街中での加速はリニアで走りやすい。
1.2トンの車に2.8リッター並みのトルクが出るパワーユニット(PU)を搭載するのだから、瞬発力は当然強い。
ところが、高速の合流加速になると、速いには速いのだが、街乗り発進加速や低速からの加速の時ほどではない。高速合流時や高速での追い越し加速では、加速の途中で息切れをする様な感じがあり、エンジンが
「ぁうぉおおおおおおおぇぇぇぇぇんんん。。。」
とすげぇ唸り方をする。
なんなんだろうなぁ、これ。
ハイブリッドの仕組みを調べる
日産のハイブリッドは、「シリーズ式」と言われるものだ。シャフトと直結しているのはモーターのみで、エンジンパワーはシャフトに伝わらない。エンジンはあくまで発電をするためだけ、発電して得たエネルギーでモーターを回し、バッテリーに蓄電し、その電気で再びモーターを回し、回ったモーターがシャフトを回す。
うーん、ややこし。
日産が「エンジン付き電気自動車」というマーケティング上の妙手とも苦し紛れの言い訳ともつかないキャッチコピーを標榜する所以である。
先ほどの高速の合流加速で「息切れ」のようになったのには、どうやらこのバッテリーとモーターの特性に理由があるとおもわれる。
ほんで、調べてみた。
まず、メーカーはよくカタログにモーターの出力を「〇〇kWh」などと載せているが、これだけでは実際の出力はわからない。
なぜか。
モーターに電力供給するバッテリーと、そこからモーターへの送電ユニット(パワーコントロールユニットと送電ケーブル)の能力により、モーターの出力は制約されるからだ。モーターが高性能でも、そこに供給される電気がちびっとなら、モーターはフルには力を発揮せぬわけだ。
ダムで言うなら、むっっちゃすごい水力発電タービンがあっても、ダムに供給できる水が少ししかない、あっても水道管が細く、かつ高低差が小さすぎてショボショボとしか水が流れていかない、とかやったら、タービンの力を無駄にするばかりである。
日産は、この肝心のバッテリー出力を公表しておらへん。しかし、現代の車載バッテリー能力がモーターの能力の限界値を上回ることはまずないため、制約を受けていることは間違いない。
で、さらに調べていくと、どうやらモーターそれ自体にも特性上限界があるらしいことがわかった。
トルク特性というやつである。
まず、エンジンのトルク特性の話をする。
エンジンは、回転数が低い状態ではトルクも弱く、一定回転数まで上がって最大トルクを発生、その後ピークアウトしていく。エンジン出力特性表などで出てくる折れ線だ。
他方、ハイブリッド車が出回り始めた当初からよく言われるのが「モーターは立ち上がりから最大出力が出る」という点である。
確かにそうで、ノートe-powerでも発進加速は非常に速い。
ところが、である。モーターというのは、回転数がゼロから一定回転まではフラットに最大トルクを出すも、一定回転以上になるとピークアウト、徐々に力が衰えていくらしい。
次の引用ページに、モーター出力特性表が載っている。
おそらく、一定速度以上になると仕事率が高い状態=高回転状態なわけで、加速をすることでその高い回転数からさらに回転数を上げていくと、モーターのトルクピークを超えてしまう、てなことが起こっているんではないか。
こういう時に、モーターのみシャフト直結のシリーズ式ハイブリッドは弱いわけだ。
下のページに、各メーカーの出力計算の方法が載っている。
ほんなら、トヨタはどやねん
トヨタは、「シリーズ・パラレル式」という、外部の人間には完全にブラックボックスになった怪しげなハイブリッド方式を採用する。
どういうことかというと、
エンジンを回す→一部動力をシャフトに直接伝え、他方をモーター回すのに使う→モーターからもシャフトに電気エネルギーを伝える(モーター経由で伝導する力は、e-powerと同じ経路を辿る)
要するに、エンジンから一度、直接シャフトに伝えるパワーと、あえてモーターを経由して電気エネルギーとして伝えるパワーとに分割して、シャフトのところで生き別れの兄弟よろしく再開して力を合わせてタイヤを回す、的な、なんかそんな感じの見ようによっては感動的な再会を果たしているっぽい雰囲気である。
知らんけど。
このシステムのいいところは、モーターがピークアウトしてしまうような高回転局面で、エンジン動力が直接がシャフトに介入してアシストできることだ。
ホンダのe:HEV(この客に覚えさせる気のないネーミングなんとかならんのか)も、高速時にはエンジン動力がシャフトに伝わるため、トヨタと同じ様な方式である。
しかし、トヨタの従来型のハイブリッドには、エンジン側からの動力伝達に難があった。
エンジンとシャフトの間に、ギアが1段しかなかったのである。
ギア比0.7台の高速用ギアだったはずだ。
ということはどういうことかというと、エンジン動力がシャフトに伝わる際には、高速ギアの定トルクの伝達しかできず、低中速域での加速ではあまりアシストを得られないということだ。筆者が昔運転したことのあるトヨタSAIなどもそうだし、現行型のトヨタTHS-IIハイブリッドの多くもこのままのはずだ。
エンジン側の中低速域での非力さを解決するために生まれたのが、「THS-IIマルチステージハイブリッド」だ。これは、エンジンからシャフトに動力を伝える際にも、4段のギアを用意している。
以下、マルチステージの解説をしたページを引用する。
こうすれば、おそらく高速の合流や追い越し加速の時にも、かなりスムーズに行けるのではないか。
しかし当然のことながら、ギアボックスを余計に一台積むわけで、その分嵩張るのは間違いない。
おそらくマルチステージがトヨタレクサスの高級車にしか積まれていないのは、スペース的に小型化できないのもあるのだろう。
そもそもハイブリッドって
先述のトヨタSAIは、発進時にスロットルを開けても反応せず、数秒後に突然急発進する、エンジン回転だけが急上昇する、などの不可解な症状が出て、危なくて乗っていられない、となって手放した経緯がある。
プリウスミサイルと呼ばれる事故のいくばくかはこうした不具合が原因ではないかと、疑っている次第だ。
それ以来、ハイブリッドなるもの自体を、就中トヨタのハイブリッドを、あまり信用していない。いま私がスバルのレヴォーグ(VM4)に乗っているのも、理由の一つはそれだ。
しかし、である。
昨今の原油の高騰は、やはり再びハイブリッドを今後(といって5年後かそこらだろうが)購入の候補に入れていかざるを得ない状況を生み出している。
何せ、今年はじめ頃にはリッター130円台だったはずのガソリン(レギュラー)である
原油価格は、ロケットの様に急上昇して、羽の様にゆっくり落ちるというのが定説である。
それがロシアが侵略を開始してリッター170円台に急上昇だ。40%ほどの値上がりで、この上がり幅分は、ちょうどハイブリッド車の同クラスのガソリン車に対する燃費の向上幅と同じくらいなのである。
ノーマルの車と同クラスのハイブリッド車に切り替えて、ようやく燃料コストを従前と据置レベルまで吸収できる、といった具合だ。
さらにいえば、地球温暖化対策などで今後ハイブリッドシフトは一層加速する。自動車市場からハイブリッド以外の選択肢自体が消えていくだろう。
そんな中では、ハイブリッドは信用ならぬともいっておられない。希望的観測として、今から10年以上前の設計のハイブリッドであったSAIのころから、トヨタのシステム自体も飛躍的に進化している、であろうことを祈るばかりだ。
将来の車を考える
ハイブリッドが信頼性が向上しているかどうかはわからんが、選択肢がないならそれにかけるしかない。後は、様々なハイブリッド方式の長所短所を知っておくことだ。
今回ノートe-powerに乗って分かったのは、「シリーズ式は高速に弱い」、ということだ。
シリーズ・パラレル式のトヨタのSAIの方が、確かに高速での特性は良かったように思う。
そういう意味では、トヨタ・ホンダがそれぞれ販売している、シリーズ・パラレルが万能選手といえる。尤も、システムが複雑化しすぎてブラックボックス化している点が、先述の信頼性の面で不安であるが。
これは、ハイブリッド方式自体の得手不得手の問題もあるが、同時にバッテリーの定格出力や、電源供給するケーブルやパワーコントロールユニットの昇圧能力にもよる。さらに言えば、システム図を見ていても出てこないのだが、コンデンサなどを使って電気を溜め込んで、大電圧をガツンと送り込んで、ここ一番のブーストパワーを得るシステムなどはできないものだろうか?なんかスーパーロボットっぽくてかっこいいし(オイ)、やってみてはいかがか?
今後、バッテリーは全個体電池や、ナトリウム極・カリウム極などの非レアメタル系も登場すると思われる(ただし、原子番号が大きい=重量が重いNaやK極電池が車載用に適するかはわからん。当面は全個体電池化が急務だろう、安全性のためにも)。さらに昇圧システムやケーブルの能力も向上するだろう。そうすれば、ハイブリッドシステム自体もさらに性能向上が期待できる。
5−6年後、まともに欲しいと思えるハイブリッドがあればいいが。。。