今回は初の試みとして、HDR合成を行った。
露出の異なる数枚の写真を重ね合わせて、暗すぎるところは明るく、明るすぎるところは暗くして、肉眼で見た風景に近い写真にする技法である。
人間の目とはすごいもので、カメラで撮ると暗すぎたり明るすぎたりするものを同時に見ても、全てクリアに脳で認識できるようになっている。今のデジタルセンサーでは到底追いつけない、広いダイナミックレンジをもっている。
そうした人間の目にかなわないため、デジタルセンサーで人間が見た画に近い画像を表現しようとすると、HDR合成が必要になる。
慣れないため、複数露出を作り出すのにも苦労した。
F値をいじると、被写体のボケた写真とそうでない写真を合成することになってしまい、合成失敗しやすい。
そこで今回は、SSのみをいじってみた。
EV-2.0くらいから3分の1段ずつ変化させてEV+2.0まで、だいたい9枚から12枚撮影する、ということを何度も行った。その中で合成が比較的うまくいったものを選んで、掲載している。
よくHDR合成のハウツーなどは、ブログなどで掲載されている。合成する画像のEVの幅が広ければ広いほどよりダイナミックに、重ねる写真が多いほど精細になるように書かれているもののある。
実際やってみたところ、必ずしもそうではないことが分かった。
ポイントは被写体ブレである。
特に今回の麓郷展望台は、手前にがくぶち効果を狙って木を配置し、近景から中景にかけてはラベンダーの下部やルピナス、林がある。遠景にも動く太陽と雲がある。
このように風で動いたり時間をかけて移動するものがあると、あまり広いEVで何枚も撮影しているうちに場所がずれ、合成した際にゴーストが出やすくなる。
ちなみに、HDR撮影は三脚必須であるが、三脚もずれにくい性能のいいものがあったほうが歩留まりが良くなるだろう。
おそらく、「お城」とか「岩場」、あるいは遠景の海岸線のみ、という撮影ならば、被写体ブレが起こりにくいため、EV幅を持たせて合成写真枚数を増やすのは得策かもしれない。いずれもHDR画像ではないが、例えば以下の作例の被写体などは、そういった合成に向く。
しかし、今回はそうはいかない。結局、EV+-2の範囲で撮った13枚のうち、EV+-1の範囲内の5枚の写真のみを使って合成をしたら、冒頭掲載のように、比較的ゴーストの少ない写真となった。
かなり歩留まりを見て撮影する必要があるため、時間を要する。しかもそうこうして時間をかける間に、太陽は刻々と沈んでいく。
しかもブヨなどの虫がぶんぶんと飛んでいて、刺される恐れもある・・・。
なかなか大変なコンディションだった。
こちらはHDRではない手持ち撮影である。
帰り道で夕焼けがえげつなく赤かったので車を止めて撮った。
後でPCで見たら構図が下を入れすぎていたため9:16アスペクト比にクロップした。
オリジナルの縦横比でもっと空を入れればよかったか。
Nikon Zのセンサー(ソニー製らしい)は、黒つぶれしている部分も画像情報はきちんと読み込まれていることが多い。困ったら露出アンダー気味で取っておけばRAW現像時になんとかできる。反対に、露出オーバー気味で撮ると、白飛び部分の画像情報は飛んでしまっていることがあるため注意が必要。オリンパスのマイクロフォーサーズは、逆に白飛びさせても情報が残りやすいが、黒つぶれさせると情報が飛ぶ傾向があるらしい。
この写真、露出アンダーで撮った手前の草原の黒つぶれを、シャドーを引っ張り上げて調整した。後は彩度を少し調整したくらいで、特段手を加えていない。
麓郷展望台などの観光スポットではなく普通の道端で、それもHDRのような技巧を加えずに、思いがけず切り取る風景の方が、意外性があって貴重なものである。