手軽な一揆の起こし方

エセ評論家の生活と意見

「海賊王女」視聴完了後評価(完全ネタバレ)

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1.アニメーション技術面 24.5/30

1)キャラクター造形(造形の独自性・キャラ間の描き分け) 4/5

2)作り込みの精緻さ(髪の毛、瞳、陰影など) 4/5

3)表情のつけやすさ 4/5

4)人物作画の安定性 4.5/5

5)背景作画の精緻さ 4/5

6)色彩 4/5

 

2.演出・演技 59.5/85

声優

1)せりふ回し・テンポ 4/5

2)主役の役者の芝居(表現が作品と調和的か・訴求力) 4/5

3)脇役の役者の芝居(表現が作品と調和的か・訴求力) 4/5

映像

4)意義(寓意性やスリル)のあるコマ割り 3.5/5

5)カメラアングル・画角・ボケ・カメラワーク 3.5/5

6)人物表情 4/5

7)オープニング映像 3.5/5

8)エンディング映像 3.5/5

音楽

9)オープニング音楽

作品世界観と調和的か 3.5/5

メロディ 3.5/5

サウンド(ヴォーカル含む) 3.5/5 

10)エンディング音楽

作品世界観と調和的か 3/5

メロディ 3/5

サウンド(ヴォーカル含む) 3/5

11)劇中曲

作品世界観と調和的か 3.5/5

メロディ 3.5/5

サウンド(ヴォーカル含む) 3/5

 

3.ストーリー構成面 29/40

1)全体構成 7/10

2)各話脚本 8/10

3)全体のコンセプトの明確性 7/10

4)各話エピソードと全体構造の相互作用 7/10

 

総合スコア 113/155(72.90%)・・・Bランク

 

SSランク・・・95%以上

Sランク・・・90%以上95%未満

Aランク・・・75%以上90%未満

Bランク・・・60%以上75%未満

Cランク・・・45%以上60%未満

Dランク・・・30%以上45%未満

Fランク・・・30%未満

 

前回のアニメ作品スコアリングから、さらに項目を増やしてみた。

今回は、昨年10月〜12月期に放送された1クールものの作品「海賊王女」の時評。

こうして評価をしてみると、どんな作品でもなかなかBランク以上に上がるのは難しそうだ。

今後、さらに配点割合などを調整していく必要があろう。

 

「白い砂のアクアトープ」とは全く方向性の違う作品であるが、見た印象の満足度はより高かった。

項目別に切り分けてスコアリングしても、やはり少し高めの評価となった。

 

この作品は、タイトルの通りカリブ海から欧州をまたにかけた海賊の冒険譚である。

主人公のフェナは、カリブ海の売春島に売られた英国王族の血を引く「運命の巫女」。

彼女を奪還し、世界の秘密の眠る幻の島を目指す冒険に向かうのは「ゴブリンの戦士」たち。それを追う英国海軍と私掠船。

「ゴブリンの戦士」は、安徳天皇の海没後、失われた草薙剣を回収するために幻の島を探すべく世界に放たれ、カリブ海を根拠地とするに至った武士の末裔、という設定。

同時期に放送された「tact op. destiny」がアメリカ映画的な掛け合い・演出を意識した作品だった一方で、こちらはジブリ的な演出が印象的だった。

コミカルなアクションとシリアスな逃走劇などを同時に進行させるところに、それが見られる。

主演の瀬戸麻沙美の芝居は安定しており、「ちはやふる」での新人離れした主演デビュー当時から変わらない明るく伸びやかな演技が好印象であった。

音楽面では、OP曲がマクロスΔでオーディションから歌手デビューしたJUNNAに、人気作曲家梶浦由記が楽曲提供するという豪華なものであった。しかしながら、JUNNAの強い個性と、梶浦のこれまた強い個性を持つメロディ・サウンドは、まだ十分に噛み合っているとは言えないように思えた。

梶浦由記自身がプロデュースしたkalafinaはもとより、彼女が楽曲提供をしたAimerなどの方が、今のところ彼女の曲との親和性はまだ高いように思われる(Aimerのあらゆる楽曲提供者との相性のよさがむしろ異常なのだが)。今後再びタッグを組む機会があれば、その際の深化具合が見所となる。

 

惜しいところがあるとすれば、やはりストーリーの「結」のつけ方だろう。

主人公のフェナは、「運命の巫女」である。

世界を次世代へ存続させるか否かの鍵を握る。

最終話では、その重責を全うし世界の存続を望むと引き換えに、全ての記憶を失う。

人間の業の深さと、それでもなお人間が在り続けるべきだとの思いの葛藤の末、自らの記憶を手放す覚悟をする。

しかし残念ながら、人間の汚なさ、愚かさなどの業の深さといった部分が、全12話の冒険の中で十分に描き切れたとは言えない。

フェナ自身が冒険の中で、そうした人間のどうしようもなさと直面しつつも、それでもなお人とその社会、さらには世界を愛するという選択をした、ということであれば、最終話としてドラマチックなものになっただろう。

この作品でそれを描こうとしたら、少なくとも追加で3話くらいはエピソードが必要だっただろう。

 

これもまた、結末に向けて話を「たたみに行った」感じが残るものであった。

 

さて、このスコアリング、だんだん面白くなってきたので、他のもぼちぼちやってみるか。